Figmaの株はなぜ下がり続けるのか、決算を読んでみた
はじめに
Figmaを$50前後で買って持っているんですが、そこから$22まで下がって、今は$29付近。IPOピークの$143からは約80%の下落です。
株価がずっと下がっている理由が気になって、2026年2月18日に発表されたQ4/FY2025の決算を読んでみることにしました。
結論
先に結論から。Figmaの株価が下がり続けている理由は、利益成長への期待値が低いことが原因かな思いました。
決算を読んでわかったこと
- 粗利率が92%→86%に低下している。Non-GAAPベースの実質売上原価がQ4で前年比+156%とかなり増えていて、売れば売るほどコストも増える構造になりつつある。AI関連のインフラ費が主因かも
- 販管費が売上成長を上回っている。研究開発費+48%、営業マーケ費+57%に対して、売上は+40%。コストの方が速く膨らんでいる
- 2026年のガイダンスで営業利益が下がる。売上+30%の見通しなのに、Non-GAAP営業利益は$129.5M→$100-110Mに減少
売上+40%、NDR 136%と、トップラインの成長は文句なし。ただこの売上が利益に繋がるかが不明。特に粗利率の低下は販管費と違い、サービス提供に直結するコスト。
以下、基本情報 → PL → 設備投資 → 事業リスク → ビジネスモデル → 株価と順を追って決算の数字を一つずつ見ていきます。
1. 基本情報を押さえる
まず基本的なところから。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| ティッカー | FIG (NYSE) |
| 会計年度 | 1-12月(暦年と同じ) |
| 今回の決算 | Q4(10-12月)+ FY2025 通期 |
| IPO | 2025年7月にNYSE上場 |
決算にはGAAP(公式の会計基準)とNon-GAAP(株式報酬等を除いた数値)の2種類が開示されています。
FigmaのFY2025のSBC(株式報酬)は$1,364Mで、売上の$1,056Mを超えてます。SBCというのは従業員に給料代わりに自社株を配る仕組みで、帳簿上は費用になるけど会社から現金が出るわけではない。これが巨額すぎてGAAPだと大赤字に見えるので、実態を掴むにはNon-GAAPで見る必要があります。
2. PL(損益)を読む
売上 → 粗利 → 営業利益 → 純利益の順に、前年比を確認していきます。
数字の一覧
テーブルの「PDF」列は Earnings Press Release(PDF) のページ番号です。
| 指標 | Q4 2025 | Q4 2024 | 前年比 | FY2025 | FY2024 | 前年比 | 英語表記 | |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 売上 | $303.8M | $216.9M | +40% | $1,055.8M | $749.0M | +41% | Revenue | p.6 |
| 売上原価 | $54.3M | $16.5M | +230% | $185.5M | $87.5M | +112% | Cost of revenue | p.6 |
| 粗利率(GAAP) | 82% | 92% | -10pp | 82% | 88% | -6pp | GAAP gross margin | p.9 |
| 粗利率(Non-GAAP) | 86% | 92% | -6pp | 88% | 92% | -4pp | Non-GAAP gross margin | p.9 |
| 営業利益(GAAP) | $(195.5M) | $51.7M | 赤転 | $(1,290.5M) | $(877.4M) | 赤字拡大 | Income (loss) from operations | p.6 |
| 営業利益(Non-GAAP) | $44.0M | $56.4M | -22% | $129.5M | $127.2M | +2% | Non-GAAP operating income | p.9 |
| 営業利益率(Non-GAAP) | 14% | 26% | -12pp | 12% | 17% | -5pp | Non-GAAP operating margin | p.9 |
| 純利益(GAAP) | $(226.6M) | $97.8M | 赤転 | $(1,250.5M) | $(732.1M) | 赤字拡大 | Net income (loss) | p.6 |
| 純利益(Non-GAAP) | $43.0M | $52.8M | -19% | $166.8M | $140.6M | +19% | Non-GAAP net income | p.10 |
| 株式報酬(SBC) | $218.3M | $0.2M | — | $1,364.1M | $947.6M | +44% | Stock-based compensation expense | p.6, p.9 |
売上
Q4で$303.8M、前年比+40%。事前ガイダンスの上限も上回ってます。年間でも$1,055.8Mで+41%。海外売上は+45%。
NDR(Net Dollar Retention)は136%。これは既存顧客が去年と比べてどれだけお金を使っているかの指標で、100%を超えていれば既存顧客だけで売上が拡大していることを意味します。136%ということは、去年100円使っていた顧客が今年は136円使っている計算で、新規顧客を獲得しなくても既存だけで36%成長する。かなり強い数字です。
粗利率
ここが一番気になったところです。
| 期間 | 粗利率(Non-GAAP) | 英語表記(PDF) |
|---|---|---|
| Q4 2024 | 92% | Non-GAAP gross margin (p.9) |
| FY2024 | 92% | Non-GAAP gross margin (p.9) |
| Q4 2025 | 86% | Non-GAAP gross margin (p.9) |
| FY2025 | 88% | Non-GAAP gross margin (p.9) |
SBC等を除いたNon-GAAPベースの実質売上原価を見ると、Q4 2025は$42.0Mで、Q4 2024の$16.4Mから+156%伸びてます。売上は+40%しか伸びてないのに、原価は+156%増えている。
営業利益
Q4のNon-GAAP営業利益は$44.0Mで、前年の$56.4Mから-22%。売上が+40%伸びてるのに、営業利益は減ってます。営業利益率も26% → 14%に半減。
Non-GAAPの営業費用の内訳を見ると、研究開発費+48%、営業・マーケ費+57%、管理費+44%で、どの費目も売上の成長率(+40%)を上回るペースで増えてます。
| 項目 | Q4 2025 | Q4 2024 | 前年比 | 英語表記(PDF) |
|---|---|---|---|---|
| 研究開発費 | $84.4M | $57.1M | +48% | Non-GAAP research and development (p.9) |
| 営業・マーケティング費 | $95.2M | $60.5M | +57% | Non-GAAP sales and marketing (p.9) |
| 一般管理費 | $38.2M | $26.5M | +44% | Non-GAAP general and administrative (p.9) |
純利益と特殊要因
GAAPだとFY2025は$1,250Mの大赤字ですが、これはほぼSBCのせいです。FY2025のSBC $1,364Mのうち$975.7MはIPO関連でQ3に一括計上された一時的なもの。
Non-GAAPで見るとFY2025は$166.8Mの黒字(前年比+19%)。ただQ4単体だと$43.0M(前年比-19%)で、直近は悪化トレンドにあります。
ちなみにQ4 2024のSBCが$0.2Mとほぼゼロなのは、2024年5月にRSU Releaseがあってそれ以降Q4にはSBCが残ってなかったためです。
SBC内訳(FY2025):
| 項目 | 金額 | 英語表記(PDF) |
|---|---|---|
| 売上原価 | $51.0M | Cost of revenue (p.6 脚注) |
| 研究開発 | $697.7M | Research and development (p.6 脚注) |
| 営業・マーケ | $218.8M | Sales and marketing (p.6 脚注) |
| 一般管理 | $396.7M | General and administrative (p.6 脚注) |
| 合計 | $1,364.1M | — |
3. 設備投資を見る
| 指標 | Q4 2025 | FY2025 | FY2024 | 英語表記(PDF) |
|---|---|---|---|---|
| 設備投資(CapEx) | $0.7M | $4.4M | $2.0M | Capital expenditures (p.8) |
| CapEx / 売上 | 0.2% | 0.4% | 0.3% | — |
設備投資は売上の0.4%とほぼゼロに近いです。自社でサーバーを持たず、クラウドを借りている構造なので。ただ、そのクラウド利用料が売上原価に計上されてるので、設備投資ではなくランニングコストとして利益を食っている形になってます。
AI機能はこの決算期間中(FY2025)は既存プランに含まれていて、追加料金は取っていませんでした。ただし、2026年3月からAIクレジット制が導入され、上限を超える利用には追加課金($0.03/クレジット〜)が始まっています(出典: Figma Blog)。これがFY2026以降の売上にどう効いてくるかは注目ポイントです。
あとWeavy(AI画像編集)を買収しています(報道ベースでは$200M超、決算書上の現金支払い純額は$58.3M)。のれんが$11.4M → $101.4Mに増加。
キャッシュフロー:
| 指標 | FY2025 | FY2024 | 英語表記(PDF) |
|---|---|---|---|
| 営業キャッシュフロー | $250.7M(margin 24%) | $(61.7M) | Net cash provided by operating activities (p.8) |
| Free Cash Flow | $242.7M(margin 23%) | $(68.2M) | Free Cash Flow (p.11) |
バランスシート(2025年12月末):
| 項目 | 金額 | 英語表記(PDF) |
|---|---|---|
| 現金+有価証券 | $1,656.0M | Cash and cash equivalents + Marketable securities (p.7) |
| 前受金(Deferred Revenue) | $595.3M(前年 $381.4M、+56%) | Deferred revenue (p.7) |
| 有利子負債 | $0 | — (p.7) |
現金は$1.7B近くあって、有利子負債はゼロ。財務は健全です。前受金も+56%と積み上がってます。
4. 事業リスクを見る
顧客構成
| 指標 | 数値 | 英語表記(PDF) |
|---|---|---|
| NDR | 136% | Net Dollar Retention Rate (p.2) |
| ARR $10K以上の顧客 | 13,861社 | Paid Customers with more than $10,000 in ARR (p.2) |
| ARR $100K以上の顧客 | 1,405社 | Paid Customers with more than $100,000 in ARR (p.2) |
| ARR $1M以上の顧客 | 67社 | Paid Customers with more than $1,000,000 in ARR (p.2) |
特定の大口顧客への依存は開示されてないので、顧客基盤は分散してるようです。
AI関連の動き
プレスリリースに記載されてたAI関連のハイライトをまとめておきます。
- Figma Makeの週間アクティブユーザーが前四半期比+70%成長
- ARR $100K以上の顧客の半数以上がFigma Makeを週次で利用
- Make利用者(Fullシート)の80%以上がFigma Designも利用
- Figma MakeでGemini 3 ProとClaude Opus 4.6が利用可能に
- Make Connectors導入(Atlassian、GitHub、Notion、Linearからデータ取り込み)
- Claude Code to Figma機能リリース
- AI画像編集ツール3種をリリース
- Weavy買収 → Figma Weaveにリブランド
- AnthropicとFigma MCP app提供
- ChatGPTのFigmaアプリ拡張
AI機能の推論にはAnthropicのClaudeやGoogleのGeminiを利用していて、AI部分は外部に依存しています。ただ、Figmaのコアであるブラウザベースのリアルタイムデザインコラボは自社技術です。
5. ビジネスモデルを見る
基本はサブスク型
月額/年額のシート課金で、NDR 136%なので既存顧客が自然に拡大していく構造です。前受金も$381M → $595M(+56%)と積み上がっている。ビジネスの基盤としてはとても良いと思います。
2026年ガイダンス
| 指標 | Q1 2026 | FY2026 | 英語表記(PDF) |
|---|---|---|---|
| 売上 | $315.0-317.0M(+38%) | $1,366-1,374M(+30%) | Revenue (p.3) |
| Non-GAAP営業利益 | — | $100-110M | Non-GAAP operating income (p.3) |
ここが結構気になっていて、FY2025のNon-GAAP営業利益は$129.5Mだったのに、FY2026のガイダンスは$100-110Mになってます。売上が+30%成長する見通しなのに、営業利益は減少するガイダンスです。
6. 株価を見る
バリュエーション
希薄化後株式数を約560M株として計算してみました(Q4 2025 Non-GAAP diluted: 558.6M)。
| 時点 | 株価 | 時価総額 | PSR(時価総額÷売上) |
|---|---|---|---|
| IPOピーク | $143 | ~$80B | FY2025ベース: 76倍 |
| 現在 | $29 | ~$16B | FY2025ベース: 15倍 / FY2026Eベース: 12倍 |
| 最安値 | $20 | ~$11B | FY2025ベース: 11倍 |
株価はYahoo Financeによる。
参考として、2022年にAdobeがFigmaに提示した買収額は$20Bでした。IPOピーク時の時価総額~$80Bはその4倍にあたります。(出典: Adobe Press Release)
好決算なのに下がるパターンとの照合
「好決算でも株価が下がるパターン」というのがあって、それに当てはめるとこうなります。
| パターン | Figmaの状況 |
|---|---|
| 投資過大 | 売上原価が前年比+230%(Q4)。2026年ガイダンスでは売上+30%に対して営業利益は減少 |
| 依存リスク | AI機能は外部LLM(Claude、Gemini)を利用。コアのデザインプラットフォームは自社技術 |
| ビジネスモデル変質 | 粗利率が92%→86%に低下。2026年はさらに営業利益率が低下する見通し |
株価が戻るストーリーはあるか?
ここまで「なぜ下がっているか」を見てきたけど、じゃあ上がる可能性はあるのか。決算の数字から考えられるストーリーをいくつか整理してみます。
AIクレジット課金が売上に効く
2026年3月からAIクレジットの追加課金が始まりました。今までコストだけかかっていたAI機能が、収益源に変わる可能性がある。ARR $100K超の顧客の50%以上がFigma Makeを毎週使っていて、エンタープライズはお金を払う余地がありそうです。仮にFY2026で$50-100Mの追加売上が出れば、ガイダンスの$1.37Bを上振れる計算になります。
非デザイナー市場への拡大
Figma Makeの利用者の60%が非デザイナー(PM、開発者、CEO、マーケター)。デザイナーだけのツールから全社員が使うツールになれば、TAM(市場規模)が大きく広がる。ARR $100K超の顧客数が46%成長(全体の40%より速い)で、エンタープライズでの浸透が進んでいるのはその兆候かもしれません。
粗利率の底打ち
Non-GAAP粗利率はQ3 25で86%に落ちてQ4 25も86%で横ばい。もしここが底で反転すれば、市場の最大の懸念が消える。AIモデルのコストは業界全体で下がり続けているし、AIクレジット課金でコスト回収も始まる。86%でもSaaS平均(70%台)より十分高い水準です。
デザインから実装へのギャップを埋める(ユーザー目線)
普段Figmaを使ってる立場から一つ。デザインデータからReact等のフロントエンド実装に落とし込むステップが、まだまだ人間の手作業に頼っている部分が大きいです。特に長く運用しているサービスだとなおさらで、デザインシステムとの整合性を保ちながらコードに落とすのはかなり手間がかかる。
理想は、Figmaでデザインしたらフロントエンドの実装までシームレスに繋がる世界。Figma MCPやデザインシステムを組んでLLMにコンテキストを渡すなど工夫の余地はあるけど、現状だとまだ設定や連携の手間が多い。ここがFigma側の機能としてもっと簡単にできるようになったら、デザイナーだけじゃなくて開発者やPMの利用も一気に広がるんじゃないかと思ってます。
Make利用者の60%が非デザイナーという数字を見ると、その方向に進んでいるようにも見える。「デザイン→コード」のギャップを本当に埋められたら、それこそ追加課金の価値を出せるポイントになりそうです。
現実的にはどこまで?
個人的には、AI課金が軌道に乗って粗利率が反転すれば$35-40は見えると思います。$50まで戻るには「成長+利益改善」の両方が必要で、次の2-3四半期の決算で「AIの投資がちゃんと回収できている」と数字で示せるかがカギになりそうです。
まとめ
決算の数字を一通り見てみました。売上+40%で成長しており、NDR 136%で顧客基盤も健全。現金$1.7Bで財務も安定しています。
一方で、粗利率が92%から86%に下がっていること、Non-GAAP営業利益がQ4で前年比-22%になっていること、そして2026年のガイダンスで売上+30%なのに営業利益は減少する見通しであること。この辺りが気になるポイントでした。
正直なところ、粗利率の低下がどこまで続くのかは自分にはまだ判断がつきません。AI機能の拡充と粗利率の低下がセットで進んでいるように見えます。ただ、2026年3月からAIクレジットの追加課金が始まったので、これがコスト回収にどう効くかが次の焦点になりそうです。次の決算ではAIクレジットの売上貢献と粗利率の推移を注意して見たいと思ってます。
データ出典: Figma Q4 2025 Earnings Press Release(PDF)(2026/2/18発表)。本記事のテーブルに記載している「PDF」のページ番号はこのPress Releaseを参照。株価はYahoo Finance。プレスリリース外の情報は個別に出典を記載。